今の季節、島の至る所に咲いて甘い香りを放っているトベラは、高さ1〜4メートル位の常緑の木です。葉や茎を千切ると独特な臭い匂いがし、島では毎年1月24・25日のカンナンボーシ(海難法師)の日には魔除けとして家の入り口にさします。
花は1センチ程でそれほど華やかではないのですが、木が白く見えるくらい沢山の花を付けた様はなかなかのものです。秋には黄色いさやの中に粘り気のある赤い種を付け、小鳥たちの恰好の餌になります。
私はこの花のジャスミンに似た香りが大好きで、よく部屋に飾って楽しむのですが、人間の感覚とは不思議なもので、この香りを臭いという人もいるのだそうです。葉や茎の臭いイメージが強すぎるのでしょうか?こんなに良い香りなのに...。
新島に自生しているエビネランは一般的なジエビネと新島・神津島・御蔵島にだけ自生するニオイエビネ、それにジエビネとニオイエビネの自然交雑種のコオズエビネの3種類で、どれもこの時期に花を咲かせます。
ジエビネは高さ20センチ位で茶色や暗緑色の地味な花が多く、ニオイエビネはジエビネに比べ大ぶりで良い香りを放ち、ほとんどが紫色系統の花をつけます。コオズエビネは香りが良いうえに花色の変化が多く、白や赤に近い紫、クリーム色や緑色と様々な花をつけます。特に純白や鮮やかな黄色は珍しく、新島でも数本しか見つかっていません。右の写真は典型的なニオイエビネです。
十数年前のエビネブームで、一株数千円から色・形の良いものは数十万円で取り引きされたため、それまで山の至る所に生えていたエビネはほとんど姿を消しました。今は村営の「えびね公園」で一面に咲き乱れる姿を見ることができます。
新島の秋の味覚のひとつ、椎の実を紹介します。
新島の山の中は冬でも葉の落ちない常緑樹が多く、その中でもよく見かけるのがスダジイです。高さが20mを越える程大きくなる木で、初夏になるとクリーム色の地味な花をたくさん咲かせます。その花は独特の強い匂いがし、島中その匂いで包まれると「もうすぐ夏だなあ...」と心が浮き立ちます。
9月の半ば頃になると、この木は1〜1.5センチ位の小さなドングリを落とし始めます。これを拾ってきて水洗いして水に浮くものは取り去り(虫が入っているからです)、フライパンで油をひかずによくかきまぜながら炒ります。殻が割れて白い中身が見えて来たら出来上がり。冷めると堅くなってしまうので、熱いうちに殻を剥いて食べます。
島での秋の山のお楽しみは他にもカアツ(アケビ)、ウビ(ムベ)、山芋など色々ありますが、誰でも簡単に楽しめるのは椎の実拾い。私の3歳になる息子も椎の実拾いが大好きです。